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2024年版 日常診療に役立てる
【医科】“個別指導での指摘事項”

 【医科】 個別指導での指摘事項①

 「2023年度に実施された個別指導(新規個別指導を含む)での指摘事項」が開示されました。指摘事項の内容を確認することは、個別指導対策になるだけでなく、日頃の保険診療、保険請求を適切に行ううえでも参考になります。
 「2023年度に実施された個別指導(新規個別指導を含む)での指摘事項」が厚生局岐阜事務所から開示されました。指摘事項の内容を確認することは、個別指導対策になるだけでなく、日頃の保険診療、保険請求を適切に行ううえでも参考になります。
 本稿では、個別指導での主な指摘事項を紹介するとともに、必要に応じてワンポイントアドバイス(☛で表記)を掲載します。

時間外加算

○ 時間外加算について、診療応需の態勢をとっている時間に算定している不適切な例が認められたので改めること【自主返還の事例】。

☛ 時間外加算は、「当該保険医療機関が常態として診療応需の態勢をとり、診療時間内と同様の取扱いで診療を行っているときは、時間外の取扱いとはしない」とされています。よって、標榜時間を過ぎたからといって、診療応需の態勢をとっている場合は時間外加算を算定できませんのでご注意ください。


夜間・早朝等加算

○ 夜間・早朝等加算について、受付時間に係る診療録への記載がなく、算定の根拠が確認できない例が認められたので、改めること。

☛ 夜間・早朝等加算の算定にあたり、定められたカルテへの記載事項はありませんが、算定の根拠となる「受付時間」のカルテ記載は必要と考えます。同様に、時間外加算についても算定の根拠となる「診療時間」をカルテに記載しておきましょう。


外来管理加算

○ 外来管理加算について、次の不適切な例が認められたので改めること。①、②とも自主返還の事例。

 ① 患者本人が受診せず、患者の家族が来院した場合に算定している。

 ② 電話再診の場合に算定している。

 ☛ 「投薬は本来直接本人を診察した上で適切な薬剤を投与すべきであるが、やむを得ない事情で看護に当たっている者から症状を聞いて薬剤を投与した場合においても、再診料は算定できるが、外来管理加算は算定できない」との厚労省通知からも分かるとおり、外来管理加算は患者を対面で診療した場合にしか算定できませんのでご注意ください。


診療情報提供料(Ⅰ)

○ 診療情報提供料(Ⅰ)について、次の不適切な例が認められたので改めること。①は自主返還の事例。

 ① 紹介元医療機関への受診行動を伴わない患者紹介の返事について算定している。

 ☛ 診療情報提供料は、紹介元医療機関に診療状況を示す文書を添えて再度紹介した場合は算定できますが、単に返事を出しただけでは算定できません。

 ② 交付した文書が別紙様式に準じていない。

 ☛ 診療情報提供書は、紹介先機関ごとに様式が定められており、その様式又はこれに準じた様式を使用する必要があります。


在宅自己注射指導管理料

○ 在宅自己注射指導管理料について、在宅自己注射の導入前に、入院又は2回以上の外来、往診若しくは訪問診療により、医師による十分な教育期間をとり、十分な指導を行っていない不適切な例が認められたので改めること【自主返還の事例】。

☛ 上記に加え、「指導内容を詳細に記載した文書を作成し患者に交付する」ことも要件化されていますので、忘れずに対応しましょう。

☛ アドレナリン製剤(エピペン)については、外来等での導入前の2回以上の指導は不要とされており、初回の指導で算定が可能です。


往診料

○ 往診料について、患家の求めがないにもかかわらず、往診を行っている不適切な例が認められたので改めること【自主返還の事例】。

☛ 往診料は、「患者又は家族等の患者の看護等に当たる者が、保険医療機関に対し電話等で直接往診を求め、当該保険医療機関の医師が往診の必要性を認めた場合に、可及的速やかに患家に赴き診療を行った場合に算定する」とされていますので、ご注意ください。


ビタミン剤の投与

○ ビタミン剤の投与について、次の不適切な例が認められたので改めること。①、②とも自主返還の事例。

 ① ビタミン剤の投与が必要かつ有効と判断した趣旨に係る診療録への記載がない。

 ☛ ビタミン剤の算定にあたっては、「当該ビタミン剤の投与が必要かつ有効と判断した趣旨を具体的にカルテ及びレセプトに記載しなければならない」とされています。ただし、病名によりビタミン剤の投与が必要、かつ、有効と判断できる場合はレセプトへの趣旨記載は不要とされています。

 ② 経口投与が可能である患者に対して、注射により投与している。

 ☛ 療養担当規則第20条には次のような規定があり、注意が必要です。

 四 注射

 イ 注射は、次に掲げる場合に行う。

  (1) 経口投与によって胃腸障害を起すおそれがあるとき、経口投与をすることができないとき、又は経口投与によっては治療の効果を期待することができないとき。


(岐阜県保険医新聞2024年8月10日号)


 
 【医科】 個別指導での指摘事項②

 「2023年度に実施された個別指導(新規個別指導を含む)での指摘事項」が開示されました。指摘事項の内容を確認することは、個別指導対策になるだけでなく、日頃の保険診療、保険請求を適切に行ううえでも参考になります。
 「2023年度に実施された個別指導(新規個別指導を含む)での指摘事項」が厚生局岐阜事務所から開示されました。指摘事項の内容を確認することは、個別指導対策になるだけでなく、日頃の保険診療、保険請求を適切に行ううえでも参考になります。
 前号に引き続き、個別指導での主な指摘事項を紹介するとともに、必要に応じてワンポイントアドバイス(☛で表記)を掲載します。

退院時共同指導料1

○ 退院時共同指導料について、別に厚生労働大臣が定める特別な管理を要する状態等にある患者以外の者に特別管理指導加算を算定している不適切な例が認められたので改めること【自主返還の事例】。

☛ 退院時共同指導料1の特別管理指導加算の対象患者(=別に厚生労働大臣が定める特別な管理を要する状態等にある患者)は次のとおりです。詳しくは『保険診療の手引』374 頁をご覧ください。

  ① 在宅麻薬等注射指導管理、在宅腫瘍化学療法注射指導管理又は在宅強心剤持続投与指導管理若しくは在宅気管切開患者指導管理を受けている状態にある者又は気管カニューレ若しくは留置カテーテルを使用している状態にある者

  ② 在宅自己腹膜灌流指導管理、在宅血液透析指導管理、在宅酸素療法指導管理、在宅中心静脈栄養法指導管理、在宅成分栄養経管栄養法指導管理、在宅自己導尿指導管理、在宅人工呼吸指導管理、在宅持続陽圧呼吸療法指導管理、在宅自己疼痛管理指導管理又は在宅肺高血圧症患者指導管理を受けている状態にある者

  ③ 人工肛門又は人工膀胱を設置している状態にある者

  ④ 真皮を越える褥瘡の状態にある者

  ⑤ 在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者


短期滞在手術等基本料

○ 短期滞在手術等基本料について、次の不適切な例が認められたので改めること。②、③は自主返還の事例。

 ① 短期滞在手術等同意書

  ・ 症状欄がなく、別紙様式8に記載のある項目全てを記載した様式になっていない。

 ② 退院翌日に患者の状態を確認する等、十分なフォローアップを行っていない場合に算定している。

 ③ 看護師が回復室に常時勤務していない場合に算定している。

☛ 無床診療所において短期滞在手術等基本料1を届け出し、算定するケースが増えています。同基本料の算定要件、施設基準、同意書等を『保険診療の手引』209 頁に掲載していますので、ご確認ください。


経皮的動脈血酸素飽和度測定

○ 経皮的動脈血酸素飽和度測定について、酸素吸入を行う必要のない患者又はその他の要件にも該当しない患者に算定している不適切な例が認められたので改めること【自主返還の対象】。

☛ 経皮的動脈血酸素飽和度測定は、下記ア、イのいずれかに該当する患者に対して行った場合に算定します。詳しくは『保険診療の手引』883頁をご確認ください。

  ア 呼吸不全若しくは循環不全又は術後の患者であって、酸素吸入若しくは突発性難聴に対する酸素療法を現に行っているもの又は酸素吸入若しくは突発性難聴に対する酸素療法を行う必要があるもの

  イ 静脈麻酔、硬膜外麻酔又は脊椎麻酔を実施中の患者に行った場合

   ※ 閉鎖式全身麻酔を実施した際にL008 マスク又は気管内挿管による閉鎖循環式全身麻酔を算定した日と同一日には算定できない。


リハビリテーション

○ 運動器リハビリテーションについて、次の不適切な例が認められたので改めること。②のみ自主返還の事例。

 ① リハビリテーションの起算日

 ・ 発症、手術又は急性増悪の日が明確な場合はその日、それ以外の場合は最初に診断がされた日ではなく、リハビリテーションを開始した日としている。

 ☛ 運動器リハビリテーション料は、「発症、手術若しくは急性増悪又は最初に診断された日から150 日を限度として算定する」とされているため、ご注意ください。

 ☛ 各疾患別リハビリテーション料の起算日は下表のとおりです。

  ・ 標準的算定日数を経過する毎に対象疾患を変更している。

 ☛ 標準的算定日数(=算定日数上限)を超えた患者の取扱いは、『保険診療の手引』1142頁の「疾患別リハビリテーション料算定日数上限超のフローチャート」を参照ください。

 ② リハビリテーション実施計画書

  ・ 別紙様式21 を参考としたリハビリテーション実施計画書を作成していない。


保険外負担

○ 保険外負担等について、次の不適切な例が認められたので改めること。

 ① 療養の給付とは直接関係ないサービスとはいえないものについて、患者から費用を徴収している。

  ・サージカルテープ

 ② 所定の点数に含まれるものについて、患者から徴収している。

  ・足関節サポーター

☛ 「実費徴収が認められないもの」「実費徴収が認められるもの」を、『保険診療の手引』16頁以降にまとめていますのでご確認ください。


掲示事項

○ 掲示事項について、次の不適切な事項が認められたので改めること。

 ・保険外負担に関する事項を掲示していない。

☛ 保険医療機関は見やすい場所(受付窓口、待合室等)に当該実費徴収に係るサービス等の内容及び料金等に関する事項を分かりやすく掲示する必要があります。掲示例は『保険診療の手引』16 頁をご確認ください。

☛ 2024年度診療報酬改定により、上記掲示事項は原則としてウェブサイトに掲載しなければならないことになりました(経過措置:2025年5月31日)。ただし、ホームページ等を有しない場合は対応不要です。


(岐阜県保険医新聞2024年9月10日号)