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5月調査「オンライン資格確認 導入調査」報告

利用者少なく、患者負担増、運用コストも懸念
医者・患者にメリット少なく「義務化反対」
 政策部は、昨年10月から本格運用の始まったマイナンバーカードのオンライン資格確認について5月下旬に導入調査を行った。調査は、FAX通信に登録している医科、歯科会員を対象に行い、222人から回答が寄せられた(回答率17.4%)。

 マイナンバーカードによるオンライン資格確認は、昨年4月に本格運用開始予定であったが、保険者の登録情報の誤りなどが発覚したため半年間実施を延期し、10月開始となった。マイナンバーカードの交付状況は、令和4年7月現在、岐阜県は人口比で43.5%。オンライン資格確認の運用開始施設は8月14日現在、病院が49.0%、医科診療所が20.4%、歯科診療所が21.6%となっている。

オンライン資格確認「実施してない」35.1%


 オンライン資格確認の実施状況(問1)では、「実施していない」が35.1%で最も多く、次いで「実施している」が27.0%、「レセコン改修待ち」が24.3%、「検討中」が9.0%、「カードリーダー待ち」が4.1%となった。
【クロス集計】「無床診療所」「有床診療所」「歯科」では「実施していない」が最も多く、「病院」は「レセコン改修待ち」が最も多かった。また、年齢が増すにつれて、「実施していない」の割合が増える結果となった。

導入の懸念は、「マイナンバーカード普及」「運用コスト負担」「管理情報の拡大・漏洩」


 オンライン資格確認導入の懸念(問2)では、「マイナンバーカードの普及」が108人で最も多く、次いで「運用コストの負担」が96人、「管理情報の拡大・漏洩」が94人、「患者への利用案内」が66人となった。
【クロス集計】実施医療機関では「マイナンバーカードの普及」を懸念に挙げる声が突出して多かった。カードリーダー待ち・レセコン改修待ちなど準備中の医療機関では、「マイナンバーカードの普及」「管理情報の拡大・漏洩」「患者への利用案内」「運用コストの負担」がほぼ同水準。実施していない医療機関では「運用コストの負担」「管理情報の拡大・漏洩」を挙げる声が多かった。
 寄せられた意見では、「マイナンバーカード利用で患者の自己負担が増える。薬剤情報や特定健診結果は患者本人に見せてもらっており負担増に見合う患者のメリットを説明できない」「高齢者の受診も多く、マイナンバーカードを安全安心に扱うのは困難」「今までに利用者は2~3人しかいない」「業者のサポートが不十分」などの意見が寄せられた。

使用頻度少なくトラブル「なかった」80.0%


 オンライン資格確認本格運用でのトラブルの有無(問3)では、「なかった」が80.0%、「あった」が15.3%となった。「なかった」とする回答が大半となったが、マイナンバーカードを利用しての受診自体が少なく円滑に導入できているとは言い難い。

それでも生じた「機器のトラブル」8人、「患者トラブル」3人、「登録データのトラブル」2人


 トラブルが「あった」と回答した13人(15.3%)に尋ねたトラブルの内容(問4)では、「機器のトラブル」が8人、「患者トラブル」「その他」が3人、「登録データのトラブル」が2人であった。
 トラブル事例として、「カードリーダーとレセコンとの相性が悪く、ネットワークエラーや機器表示がうまくいかない」「レセコンが遅くなる。カルテが開かない。レセプトが送れない」「保険証データがない。不正確。更新が遅い。全角半角などフォーマットに統一性がない」のほか、「保険証との紐付けをしていないマイナンバーカードを手渡される」「未実施医療機関でマイナカードでの診察の要求」などの受付業務の事務負担拡大を挙げる声も寄せられた。

導入課題が多く、浸透していないマイナンバーカードによるオンライン資格確認


 マイナンバーカードによるオンライン資格確認での困難事例、改善要望(問5)では、マイナンバーカードの普及遅れや利用者の少なさなど、オンライン資格確認がそれほど浸透していないことに対する声が最も多かった。高齢患者が多くマイナンバーカードの取扱いを徹底できないことや、別に公費負担医療の受給者証などが必要となる点、患者負担の増加を危惧する声も寄せられた。
 回答には困難事例だけでなくメリットの記載もあり、保険証確認やレセコンの患者情報入力が楽になったとの意見も寄せられた。
 次号は、自由意見欄に寄せられた意見を紹介する。

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協会は、来年4月の義務化に対し首相、厚労相に中止・撤回求める声明送付


 全国的にもマイナンバーカード普及率やオンライン資格確認導入が進まない中、政府は「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」において、2023年4月からオンライン資格確認の原則義務化と、マイナンバーカードの保険証利用の推進、保険証の将来的な廃止を打ち出した。また、8月10日の中医協総会において療養担当規則改正と関連点数見直しなどを答申した。
 マイナンバーカードによるオンライン資格確認は患者、医療機関にとってメリットはほとんどなく、保険証の将来的な廃止も公的保険医療が受けられなくなる危険性もある。マイナンバーカード取得は任意とする法令に明らかに抵触しており、保険証を原則交付しマイナンバーカード利用は任意とする形が最も簡便で合理的である。
 岐阜協会は、政府・厚労省に対して、医療機関におけるオンライン資格確認の義務化と、その後のマイナンバーカードの保険証利用の推進、保険証の原則廃止の方針に対し断固反対し、中止・撤回を求める理事会声明を7月15日に採択し、首相、厚労相、総務相に送付している。
 「医師・歯科医師要請署名」、「義務化に関するアンケート」を通じて、今後も、医療機関でのマイナンバーカードによるオンライン資格確認の義務化や保険証の原則廃止などについて撤回を求めていく。

(岐阜県保険医新聞2022年9月10日号)