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保険医新聞9月号主張

経営を細らせる2024年度病院の診療報酬改定
 2024年度から診療報酬改定は6月施行となり、医療機関は、準備に多少余裕が持てたように見えました。しかし改定内容が幅広く、診療報酬を賃上げに転嫁するという、病院側には選択の余地がない改定となりました。内容的にも病院としては、重い電気代などの光熱費、異常な物価コストの高騰が続く中で、新型コロナウイルス感染拡大の打撃からの医療の再建に加えて、引き続き新興感染症対策の継続や、建て替え費用の貯蓄、新規技術の導入、各専門職や事務員の確保など多くの課題も抱えています。本体財源が僅かプラス0.18%に留まったことは、医療機関の医療の質の維持にも影響し、医療の安全や医院の経営の基盤が揺らぐ事態となり得ます。

 外来においては、特定疾患療養管理料や特定疾患処方管理加算の対象疾患から算定の9割を占める糖尿病・高血圧・脂質異常症を除外するのは、200床未満の中小病院でも無床診療所と同様です。無床診療所(クリニック)より、生活習慣病管理料(Ⅱ)の点数が多少上乗せはされているものの、外来での通常の患者説明に加え、用紙を用いてサインを依頼する時間等がかかり、外来を長引かせる要因となっています。医師の働き方改革に反する医師への負担をかける改定となりました。

 また入院については、高齢者の入院を標的に、急性期入院医療(2次救急含め)を大幅に絞り込みつつ、現役世代の患者よりも手薄な看護体制で救急入院する高齢者を診るよう求めています。急性期医療に留まらず、回復期リハビリ病棟におけるアウトカム評価の強化、療養病棟における「医療処置」への傾斜評価など、治療・改善の効果が見込みにくく、手間を有する高齢者はさらに入院医療から遠ざけられていくこととなりました。

 急性期7対1病院の平均在院日数が2日短縮され、医療等必要度「救急搬送後入院」の評価基準の改定は、急性期7対1を算定する中小病院(200床未満)では、2割前後が基準を満たさなくなり、病院・患者ともども大きな影響を受けています。代わりの受け皿として、10対1相当の「地域包括医療病棟入院料」が新設されました。届出対象病棟は急性期一般2~5ですが、既に地ケア病棟、回ケア病棟を届け出ている医療機関も多く、10対1の病院は新たな選択肢を迫られるとともに、患者の受け入れにも大きな転換となりえます。

 今回の改定は、地域医療の最前線に立ち、長年貢献してきた中小病院、診療所の経営、地域に密着した介護事業所の経営を先細らせ、地域医療に留まらず、地域コミュニティの疲弊を進めるものと言わざるを得ません。限りある資源ではありますが、患者さんを蔑ろにすることなく、地域医療を支えるかかりつけ医や中小病院も経営が成り立つ政策を望むものです。

(2024-9)