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保険医新聞6月号主張

人を救わない予算、空前の悪法だらけの
2024年通常国会を振り返る
 2024年の通常国会が閉幕します。依然収まらぬ新型コロナ禍の中、アベノミクスの末路としての記録的な円安による物価高、元日の能登半島地震など、我が国は次々と難題に直面しています。医療界は、OECD平均から13万人も不足した状態が依然続いている医師不足と医療崩壊の危機の中、「それでも」奮闘したコロナ禍における努力すら顧みられず、インフレ下で社会から置き去りにされる形で、社会保障費抑制と医療機関への締め付けが強まっています。

 6月施行の診療報酬改定では、高血圧症等3疾患の特定疾患療養管理料外し、生活習慣病管理料の療養計画書策定義務化、ベースアップ評価料届出等にみる煩雑な手間の増加など、経営や労務への悪影響は計り知れません。また4割の訪問介護事業者が赤字経営を強いられる中での介護報酬削減など、命と健康を守る分野があまりにも蔑ろにされています。職業意識のみによって支えられている現状は本当に危険です。

 1月初頭からの前半国会では112兆5717億円にのぼる今年度予算案が審議されました。医療・介護・年金にかかる社会保障費は37兆7193億円、しかし自然増分は1400億円も切り詰められました。一方で、現場の手間を増やすだけの「マイナ保険証」推進予算には、2兆円規模のマイナポイント事業を終了してなお追加で注ぎ込まれたほか、防衛費も昨年比で1.1兆円も積み増し8兆円規模となるなど、農林水産予算や文科予算とともに我が国にとって重要な予算は圧縮されたまま、承認となりました。多くの困窮者を放置したまま、政府は財源論を都合よく使い分けていると言わざるを得ません。4月の補欠選挙においては、そうした自民党の権力の正統性が問われる「裏金問題」に怒る市民の声が形となり、野党側が3連勝となりました。

 後半国会では4月10日の日米首脳会談を受け、防衛政策一辺倒とも言うべき政府の姿勢を法制化する形で、重要法案が次々と短時間で可決しています。国家による身辺調査を容易にするセキュリティクリアランス法案(経済秘密保護法案)、陸海空自衛隊を(米国が)一元的に指揮する「統合作戦司令部」創設などを盛り込んだ改定防衛省設置法案など、我が国の統治の形は急速に歪められています。

 平和なくして、市民の命と健康なくして、国家の存立はあり得ません。今こそ、この国で真面目に生きる人々の「人権」という立場に立った政治の在り方が求められています。

(2024-6)