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保険医新聞10月号主張

「医師の働き方改革」に対する保険医協会の要望
 医師は他職種と比較して突出した長時間労働であり、近年それに拍車が掛かり、医師の過労死は後を絶たず繰り返されている現状があります。時間外労働の上限規制等を定めた働き方改革関連法案が2018年6月29日に成立しました。医師は、応召義務等の特殊性から5年間適用が猶予されますが、2019年3月をめどに規制の具体的なあり方が取りまとめられる予定です。医師の働き方改革は直接的には主に勤務医の労働時間、労働環境の改善のためのものでありますが、これは今後の医療供給体制の在り方と深くかかわり、地域医療を担う開業医に影響が必ず及ぶことは必至です。

 勤務医の生命・健康を脅かされることのないようにする必要があること、また、勤務医の労働環境の改善は、患者の受ける医療の質と安全の確保、医師の地域偏在、診療科偏在の解消など、地域医療の充実にとって緊急・不可欠であります。保団連は、「過労死・過労自殺を生み出す医師の勤務環境の改善を最優先とし、現場の実績を踏まえた『医師の働き方改革』を求めます」という要請書を2018年3月15日、4月19日に国会議員、厚労大臣、医政局長へ発出しております。内容は①長時間労働の是正、労基法に基づく労働環境の整備に、政府・厚労省として全力を尽くすこと②必要医師数(現状でOECD平均と比較し約10万人不足)が確保されるまで計画的に医師養成を行うこと、あわせて診療報酬を拡充すること③現場の医師の要望を踏まえつつも、安易な業務移管とならないよう特に注意を払うこと④有識者検討会のメンバーに勤務医労働者を補充・追加することであります。

 医師不足のまま長時間労働を是正すると、救急医療からの撤退、外来診療の縮小、産科・小児科の撤退、医療機関の経営破綻、医療の質の低下、アクセスや利便性の低下など深刻な地域医療の崩壊が懸念されます。保団連の調査によると医科開業医の開業期間は短くなっており、初期投資の高額化や在宅医療点数の複雑化、24時間対応の厳しさなどが、地域医療に貢献しようという使命感を萎えさせている可能性が示唆されています。労働条件改善や人件費を含む医療機関の原資を確保するため診療報酬の引き上げは不可欠であります。

 医師の働き方改革において重要な視点の一つに女性医師の増加があります。60歳代医師の女性比率は9.9%であるのに対し、20歳代医師では34.8%であり、男女問わず医師・歯科医師が人間らしい働き方のできる環境を整える必要があります。医師・歯科医師は過酷な働き方を要求されても耐えようとしてきた歴史がありますが、自己犠牲で医療を提供し続けるには困難な時代となっております。問題の根源は医療費抑制政策による低診療報酬、医師不足であり、そこから派生する地域偏在、診療科の偏在にあります。必要医師数が確保されるまで計画的な医師養成と診療報酬の拡充を求めることが急務です。

(2018-10)