Contents
Home 
会長挨拶 
保険医協会とは 
医療制度改善 
協会の主張 
診療報酬改定 
医科研究会 
歯科研究会 
その他の行事 
保団連の書籍 
役員一覧 
事務所ご案内 

政策部長談話

 再発または難治性の白血病やリンパ腫などに対してCAR-T細胞療法を利用した製剤「キムリア点滴静注」(ノバルティスファーマ)が、5月15日の中医協総会において、原価計算方式により3,349万円(1患者当たり)の薬価で収載されることが了承された。投与患者数はピーク時(8年度目)で年216人とされ、72億円の販売金額が見込まれている。

高薬価の原因は開発提携先へのパテント料


 CAR-T細胞療法は、治療法が確立していない重篤・致死的な疾患に対する治療として期待される一方、米国におけるキムリアの価格には、ノバルティスが開発提携先に支払う超高額なパテント料などが反映され5,000万円を超えているとの指摘がある。名古屋大学や中国では100万円前後でのCAR-T細胞療法による治療実施例が見られることなどから5,000万円の価格水準は妥当ではない。ノバルティスが薬価算定組織(非公開)に提出した資料(非公開)では、パテント料含め原材料・労務・製造・開発経費など製品総原価(2,363万円)の内訳について、薬価算定組織に対する開示度は最低ランクの50%未満と判定されている。製薬企業は総原価の内訳などについて薬価算定組織に完全に開示すべきであるとともに、薬価算定組織は議論した内容や資料は原則全て公表し国民の前に明らかにすべきである。適応の拡大による保険財政への影響が大きく懸念されている。毎年、5万人以上が血液がん(白血病、リンパ腫、骨髄腫)にり患しており、欧州では、大腸がん、中皮腫、神経芽腫など固形がんでの臨床試験も開始されている。適応拡大等で患者数が急増する可能性がある。市場拡大再算定により薬価を引き下げるが、最大25%の引き下げに留まる。今回、「著しく単価が高い」などとして費用対効果評価の対象とされたが、費用対効果が悪いと判定された場合でも、最大一割強の引き下げにすぎない。今後も超高額な新薬の登場が予想される中、適応拡大等に十分に対応できる算定ルールへの改善も必要である。

公正で透明な薬価制度に向けた取り組みを


 すべての人に平等で、保険証一枚で最新最善最高の医療をお金の心配なく、うけることができる国民皆保険制度は日本の宝である。先人の不断の努力で築き守り抜いてきたこの国民皆保険制度こそが、国民が安全安心に暮らすことができる社会保障制度の根幹の一つであることは疑う余地はない。超高薬価問題に国民の関心が向いている今こそ、公正で透明な薬価制度に向けた取り組みを全力で進め国民皆保険制度を守り抜くことが重要である。

 国民が負担する公的医療保険制度の下、営利企業である製薬メーカーの過剰すぎる利潤追求を許してはならない。大学などアカデミアによる独自の安価な医薬品開発への支援も必要である。キムリアについて、情報の開示・公表に基づく適正な薬価算定を求めるとともに、公正で透明な薬価制度の早期の構築を強く望む。

(2019-6)