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患者さんと開業医の未来のために~医療運動に明け暮れた2025年
様々な問題を抱えた2024年診療報酬改定から1年半。本年は国会の内外で医療をめぐる様々な攻防が行われた。当協会は①診療報酬改定2024で生じた問題の解決と次年度改定2026に向けた要求運動、②患者負担減運動としての「高額療養費制度改悪問題」「薬剤(OTC類似薬)の保険外し問題」「マイナ保険証問題」を中心に、活動を行ってきた。
前回改定では「生活習慣病管理料」関連の改悪や、医療DXや医療従事者の賃上げに偏重した報酬設定が、内科系を中心に大きな影響を与えた。歯科においては、技術料の評価が低く、指導料等の算定要件の制約が多い。加えて材料費の高騰は歯科の金銀パラジウムの問題も含め、大変深刻である。医科歯科ともに経営状態は厳しく、公立病院の9割が赤字、開業医の4割が赤字という惨憺たる状況を生んでいる。2026年改定では病院団体も含め、基本診療料の10%以上引き上げを訴えているが、政府は現状、開業診療所からさらに収奪し病院への補填とする方針のようだ。財政審の建議には、新たな地域医療構想に向けた病床削減、生活習慣病管理料の見直し、外来管理加算の廃止などが盛り込まれている。医療界全体の団結が必要である。
夏の参院選後の政権与党である自民党と維新の会、そして連立を離脱した公明党で結ばれた「三党合意」の方針は依然として堅持され、引き続き社会保障費の抑制、患者切り捨ての政策は続いている。「高額療養費制度改悪問題」の議論では、保団連を中心に患者団体等の反対運動がメディアでも取り上げられ、3月には3回の方針転換の末、ついに「凍結」となった。しかし高市政権では再び「解凍」される可能性があり、予断を許さない。
「薬剤(OTC類似薬)の保険外し」問題では、協会・保団連は「医療機関で処方できなくなる」として具体的薬剤名をあげ、月100円程度の社会保険料負担軽減にしかならない愚策であると追及している。今後も引き続き運動を強めていく。
「保険証残せ」の運動では、続出するトラブルを引き続き記者発表等で訴えた。35%程度の利用率に留まり政府の側も、後期高齢者には一律で資格確認書を発行したり、自治体によっては国保加入者にも一律で発行するなど、対応に追われることとなった。すべては現場と患者の円滑な受診のためである。12月2日で社会保険の保険証の有効期限が終了したが、引き続き「保険証を『返せ』」運動を展開する所存である。
医療を取り巻く環境はこのインフレ社会の中で置き去りにされ、大変苦しい状況にある。しかしながらピンチは「チャンス」でもある。多くの先生に政治参加の大切さを考えていただき、目の前の患者さんと自身の思い描く理想の医療の実践のために、ともに力を合わせる機会にしていきたい。
(保険医新聞「主張」 2025-12)