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国民と医療機関を守るため診療報酬の大幅な引き上げを求む
医療費抑制策が強く打ち出された2002年度以降のマイナス改定の改定率は累積で11.23%にのぼり、昨今のインフレ基調以前から医療界は尋常ならざる環境に置かれてきました。2024年度診療報酬改定は、物価や賃金高騰といったインフレ基調のなかで実施されましたが、本体はわずか0.88%の引き上げにとどまり、薬価・材料価格を合わせた全体では0.12%の引き下げになるなど、全くもって不十分な内容でした。2024年度における医療機関の倒産、休廃業・解散は過去最高となり、診療科の縮小・閉鎖は全国で起きています。地域医療の崩壊が現実的なものとなり、全国知事会までもが臨時改定の実施を提言する異常事態にもかかわらず、切実な声は国に届かず今に至っています。
2月に実施した保団連の調査によれば、65.5%の医療機関が昨年1月と比べて収入が「下がった」と回答しています。そのうち41.6%の医療機関が10%以上の減収となっています。また、光熱・材料費の高騰分や人件費を診療報酬改定で「補填できていない」と回答した医療機関は90%を超えています。
厚労省の医療法人経営情報データベースシステムの資料でも、医療法人の経常利益の最頻値は「0.0~1.0%」(2022~2023年度)と、多くの医療機関が危機的状況に置かれていることは明らかです。物価高騰などに到底見合わない診療報酬の下で医療機関の経営悪化は日増しに深刻化し、医療現場はスタッフ確保や設備維持・改善に困難を極めています。
追い討ちをかけるように、財務大臣の諮問機関である財政制度等審議会が5月に春の建議を公表しました。「生活習慣病管理料の算定頻度を月1回から複数月に1回に見直すべき」「医薬分業が達成され、今後は処方箋料を引き下げるべき」など身勝手な提言ばかりで、到底容認できる内容ではありません。診療報酬は医療従事者の技術料という発想がなく、診療報酬を政策誘導のツールとしか考えない傲慢さがよく表れています。
我が国の医療保険制度は診療報酬という公定価格を基盤とした、世界に冠たる国民皆保険制度として発展してきました。国民の命と健康のため、国はその維持、更なる発展に責任を持つべきです。あらゆる産業の国際競争力が弱体化した日本では、公的医療保険制度の維持・発展こそが雇用を創出し、安定的な成長産業であるという認識に改めるべきです。
当協会は国民の医療を守り、医療機関の経営・医療従事者の生活を守るため、来年実施される2026年診療報酬改定において、診療報酬の大幅な引き上げを強く求めます。
(保険医新聞「主張」 2025-10)