参議院選挙と今後の運動
-医療・社会保障費抑制政策からの転換を目指して-

 7月20日に行われた参議院選挙は、高額療養費制度改悪の白紙撤回、薬の保険外しストップ、健康保険証の復活、医療機関の経営危機打開、診療報酬大幅引き上げなど、医療・社会保障充実の政治に転換させる重要な機会として、当会では候補者アンケートなどの情報発信に取り組んだ。また、物価高騰の下で、医療機関の控除対象外消費税の額が膨らみ、経営危機に拍車をかけており、ゼロ税率を主張した。

 結果は、衆議院に続き、与党が大幅に議席を減らし、過半数を切る結果となった。国民から自公政権に対する怒りや不満が顕著に現れた。一方で、選挙期間中には「日本人ファースト」を掲げた参政党に端を発して、自民、公明、国民なども排外的な政策を掲げた。国民生活が苦しさを増す中で、敵を作ることで分断を持ち込み、政治の本質から目を逸らさせる手法が取られている。このような情勢だからこそ、他団体とも連携し、分断や対立を煽るのではなく医師・歯科医師の立場から正しい情報提供を行い、社会保障の充実に向けて大同団結を広げる必要がある。

 与党以上に、社会保障改悪や改憲、軍拡、排外主義などを主張する政党が一定の議席を占め、与党と一緒になって社会保障制度をはじめ民主主義に反する様々な改悪を推し進める可能性が危惧される。社会保障をめぐる情勢、国会内の状況はより厳しい状況にもなりうる。こうした情勢のもとで、今後の運動として、現場の実態の報告や、患者・国民との共同の力で世論を大きく広げながら、国会内外の情勢を医療社会保障拡充の方向へ押し返していくことが必要である。

 現在の生活困難の根源は、自公政権下の新自由主義政策であり、大企業、富裕層を優遇し、働く人は低賃金や非正規、長時間労働の状況におかれていること、社会保障における企業、国の責任を後退させ、制度の改悪を重ねて患者・国民に重い負担を強いていることにある。この政治を変えなければ、国民生活の困難打開はありえない。問題の根源を覆い隠す分断、排除を許さず、政治の流れを変えるための世論を広げる運動がより一層求められている。

 防衛費の際限なき増額の一方で、「全世代型」の言葉や名ばかりの「少子化対策」を口実に医療・介護の負担増をはじめとする社会保障制度改悪が推し進められていることが問題である。小さな財源の奪い合いではなく、不要な軍備拡大を止め、社会保障費の総枠を増やし、すべての患者・国民に必要な時にお金の心配なく医療が受けられる制度を守る世論を大きく広げることが重要である。会員の皆様、共に頑張りましょう。

(保険医新聞「主張」 2025-9)