政治がすべてを決めていいのか
~参議院選挙で「現場」の意思を示そう

 6月11日、参議院にて「日本学術会議解体法案」が成立した。今国会と、最近の政治の状況、そして近年の日本の崩壊ぶりを象徴的に表す歴史的大事件である。これにより、政府が勝手に「学問的妥当性」「医学的妥当性」を左右することが可能になってしまった。つまり、政府の意に沿わない人間は「特定のイデオロギーや党派的主張を繰り返す会員は解任できる」(坂井学・内閣府担当相)として、その学問的妥当性にかかわらず学術者の代表から排除でき、代わる人間を選任できるようになってしまった。これは大変恐ろしい事態である。

 5年前に始まった新型コロナ禍では、当協会と心ある議員が力を合わせ、市民の命を守るべく、我々医療現場の声を政治の場に届けてきた。それにより補助金や現場への優遇措置など、いくつもの財政措置や政治的対応がとられてきた。その過程においては、科学的に新型コロナウイルスの脅威を分析し伝えるという「学術」も、大きな役割を果たしてきた。そして今なお、新型コロナウイルス感染症とその後遺症は、健康機能面でも社会経済的側面においても、世界的に大きな脅威となっている。そうした「科学的な視点」を無視して政治の都合だけで学術の世界を左右できるのであれば、「反科学」的な勢力が政治の主流となった場合、我々の現場はそれに振り回されることになってしまう。学術の「政治からの自由」とは、かくも重要な問題なのである。

 そしてその傍らでは、いつものように、政府は経済界の要請で「病床11万床削減」「医療費4兆円削減」「OTC類似薬の保険外し」の計画を着々と進めている。コロナ禍で多くの患者が入院できず、亡くなった反省もなく、また各地の病院が診療報酬改悪で存立の危機にあるなかで、今までアクセスできていた薬剤までも保険から外すという暴挙に出ようとしている。今や一つ一つの法案が通るたびに、「誰も政治にブレーキが掛けられない」状況が、さらに出来上がっている。それを止められるのは「選挙」しかない。

 当協会は特定の政治勢力に加担するものではなく、しかし現場の先生方や患者さんの立場に立脚して、「医療とはこうあるべきだ」という理念を掲げ活動している団体である。選挙に向けて各候補が、政党が、どんなことを訴えているのかは、岐阜県保険医新聞6月号等でお伝えしてきた通りだ。希望ある未来のために、ぜひよく考えた上で選択をしていただきたいと思う。

 また6月号4、5面には参院選立候補予定者への医療政策アンケート結果を、本号1面に医療情勢等の記事を掲載しておりますので、是非ご覧ください。

(保険医新聞「主張」 2025-7)