参議院選挙に関する保険医の要求

 協会は2025年参議院選挙にあたり、参院選立候補予定者アンケートとあわせて、5月8日までに立候補を表明した5氏に下記の要望項目を送付した。

* * *

参議院選挙に関する保険医の要求

2025年5月
岐阜県保険医協会

 参議院選挙に向けて、日夜ご奮闘のことと拝察いたします。

 さて、私ども岐阜県保険医協会は、県内の医科、歯科医師約1,700人の団体で、保険医の生活と権利を守り、国民医療の充実と向上を目的に活動してまいりました。私たちは国民皆保険を守り、地域医療の発展を願っております。今般の参議院選挙にあたり、医療・社会保障の充実と国民の暮らし、雇用の安定、平和を希求する立場から下記事項を要望いたします。

<診療報酬・介護報酬>

1.地域医療を守るため、物価高騰への対応や医療従事者のさらなる賃上げ、全ての医療機関の感染症対策充実のため、初・再診料等、入院基本料等の基本診療料を大幅に引き上げること。患者負担を増やすことなく入院時の食事療養費を引き上げること。

2.後発医薬品がある先発医薬品(長期収載品)の保険外しを中止すること。

3.介護報酬を大幅に引き上げること。引き上げにあたっては、介護・福祉事業に携わる職員について公務員に準じた給与等の水準を保障し、介護サービス全般の改善が行えるよう基礎的なサービス全般を引き上げること。介護保険の国庫負担割合を引き上げ、利用料や保険料の負担を拡大しないこと。女性を介護から解放する目的で始められた「介護の社会化」の理念を破壊し、介護保険システムを形骸化に繋がる介護予防・日常生活支援総合事業をやめること。必要なサービスが十分に受けられるようにすること。

<マイナ保険証、医療DX>

1.マイナ保険証の強引な利用促進の中止、健康保険証を復活させること。

2.医療機関等におけるオンライン資格確認義務化は撤回すること。

3.診療報酬のオンライン請求を事実上「義務化」する方針は撤回すること。

4.電子処方箋、電子カルテの標準化、診療報酬改定DXはじめ、「医療DX工程」における整備目標期限について義務化しないこと。

5.給付抑制を目的とするマイナンバー制度は中止すること。

6.マイナンバーカードと被保険者証の一体化や、マイナンバーと機微性の高い医療情報との紐付けを中止すること。

<感染症対策>

1.感染症対策について、継続的な調査と必要な措置を行うこと。

2.新型コロナワクチン定期接種について、国として必要なワクチン等の助成を継続すること。

3.学校や公的機関における必要な物資等の支援を行うこと。

4.感染症の蔓延を前提とした病床計画、社会的な人員配置、エッセンシャルワーカーに対する援助を行うこと。

<医療保険制度>

1.がんや難病など重篤な疾患を抱える患者の命に関わる高額療養費制度の自己負担限度額の見直しを「白紙撤回」すること。

2.「かかりつけ医」と連動した「外来時の定額負担」導入、市販類似薬がある医療用医薬品の自己負担増と先発品の保険給付を後発品薬価までとする「参照価格制」導入、金融資産を勘案した自己負担割合の導入、疾病種類別の自己負担割合の導入などの給付削減・負担増を行わないこと。

3.自己診断治療による症状悪化や、負担増に伴う受診抑制につながるOTC類似薬の保険外しを行わないこと。また、スイッチOTCの拡大を行わないこと。

4.入院時居住費負担の拡大、紹介状なし大病院受診時の定額負担などを中止すること。

5.国保財政運営の都道府県化により保険料引き上げや徴収強化が起こらないようにすること。法定外繰入など従来の措置を継続できるようにするとともに、国庫負担率を引き上げ、国保料(税)の引き下げや減免制度の拡充を図ること。都道府県に医療費抑制を競わせるインセンティブ交付金の強化をやめること。

<地域医療構想、医療提供体制>

1.「地域医療構想」「地域差是正」の名目で必要な医療を抑制する「病床削減」や「医師適正配置」の強要、1人当たり医療費(外来・入院)の削減、都道府県単位等の診療報酬設定などを行わないこと。

2.医師数抑制政策をあらため、OECD平均に遜色のない医師数を確保するため、公的責任で必要医師数を養成・確保し、医師不足・医師偏在を解消すること。地域枠の増員や奨学金制度を拡充すること。医学部入試での女性差別をなくすため国の責任で全医学部入試の調査を毎年実施すること。

3.「かかりつけ医」・「総合診療専門医」・「かかりつけ歯科医」等の制度を用いてフリーアクセスの制限を行わず、必要なときに必要なサービスが十分に受けられるようにすること。かかりつけ医機能報告制度の運用は登録制度、認定制度とならないようにすること。医療現場の事務負担を増やさないこと。

4.一刻も早い医師の過重労働解消に向け、スタッフの増員など診療報酬を含む条件整備を行い、過労死や過労自殺を防止すること。

<薬価制度>

1.低薬価政策により生じた医薬品不足について、政府の責任で、安全性が確保された医薬品が、安定供給され続けるよう早急に対策を講じること。

2.医薬品の承認と価格設定を透明化し、高薬価構造を是正すること。「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」を撤廃し、後発品のない先発品の薬価を引き下げること。

3.公的医療保険の給付範囲を制限する混合診療を拡大せず、安全性・有効性が確立した医療技術、医薬品等は、速やかに公的医療保険に導入すること。

4.中間年改定は医薬品の供給不安定を招くため中止すること。

<子ども医療、妊産婦、福祉、災害>

1.国として18歳年度末までを対象とする医療費窓口負担無料制度を早期に創設すること。

2.妊産婦の医療費を無料化すること。

3.国として補聴器助成制度を創設・拡充すること。

4.自治体単独で実施する医療費助成制度に対する国保国庫補助金のペナルティを廃止すること。

5.地震・豪雨をはじめ自然災害による被災者の医療・介護の自己負担免除と保険料減免を国の責任で実現すること。被災者生活再建支援制度の拡充、被災医療機関への支援を国の責任で行うこと。

<審査、指導、監査、適時調査>

1.行政手続法の趣旨に則り、指導、監査、適時調査は、保険医と患者の人権が守られることを最優先とすること。

2.審査は患者の個別性、多様性に応じた診療ができるよう医師の裁量権を尊重すること。

<消費税、生活保護>

1.景気・経済の立て直しに向けて、消費税率をただちに5%に減税すること。インボイス制度は中止すること。

2.医療機関で発生している消費税損税について、「ゼロ税率」(免税)の適用により解消すること。

3.生活保護の捕捉率を引き上げること。生活保護基準の改悪、医療扶助の自己負担導入などを行わないこと。この間引き下げた支給水準を元に戻すとともに、老齢加算を復活すること。

<原発、沖縄、核兵器、憲法>

1.原発の再稼働、新増設・核燃サイクルをやめ、既存の原発は速やかに廃炉にすること。原発からの撤退を決断し、再生可能エネルギー中心の政策に転換すること。

2.普天間基地をただちに撤去し、沖縄・辺野古への新基地建設・土砂投入をやめること。

3.核兵器禁止条約を批准し、戦争被爆国として核兵器廃絶を目指す国際世論をリードする役割を果たすこと。

4.平和と民主主義の日本国憲法の理念を守り、憲法9条への自衛隊明記をはじめとする憲法「改正」発議や国民投票は行わないこと。

以上

(保険医新聞 2025-6)