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高額療養費制度「見直し」は見送りではなく「白紙撤回」を
~前半国会の総括~
通常国会(会期6月22日まで)が開会され、昨年の衆議院選挙によって与党が過半数割れとなる下での予算案審議となった。政府は未曽有の物価高騰や実質賃金の低下などで困難を極める国民生活や倒産も相次ぐ医療・介護現場の危機への対策に背を向け、自民・公明・維新の三党合意で2025年度予算が成立した。
患者さんが支払う医療費負担限度額(高額療養費制度)を今年8月から段階的に引き上げる「見直し」について、多くの患者さんや当会をはじめとした医療関係者等の「いのちをまもれ」の声でいったん「見送る」方針が表明された。しかし、これは「先送り」にすぎず、石破首相は「今年秋までに改めて方針を検討し決定する」と表明している。受診抑制を前提とし、患者の命を脅かす今回の高額療養費制度の限度額引き上げは「白紙撤回」すべきである。
2月25日に自公維での三党合意文書がまとまり、その要旨として「2025年度から国公私立高校で年収問わず全世帯に年11万8千800円支給」などの内容とともに「医療費総額を最低で年4兆円削減し、現役世代1人当たりの社会保険料負担を年6万円引き下げる」「OTC類似薬の保険給付のあり方見直し」などのすさまじい医療改革案が示された。医療費総額を4兆円削減となれば、深刻な医療崩壊につながり、断じて許されるものではない。OTC類似薬の保険適用除外は、受診抑制や症状のマスキングにつながり病気の早期発見・早期治療を遅らせるため行ってはならない。
昨年12月に従来の健康保険証の新規発行が停止された。12月と1月のマイナ保険証の利用率は25.42%と低迷している上、各地の保険医協会の調査ではトラブルが頻発し医療現場に負担がかかっている実態が明らかになっている。保険証を残したいという声が世論の多数である。立憲民主党は1月28日に保険証復活法案を提出しており、保険証存続を求める世論を広げ、法案の成立を後押しすることが重要である。
維新を交えた予算案をめぐる動向は、自公政権の下で続けられてきた軍拡偏重、医療・社会保障費削減、国民の暮らしよりも大企業優先の施策を補強することになる。いのちと健康を守る我々医師・歯科医師は、参議院選挙を見据えて、暮らしを立て直す施策、社会保障充実政策の実現に向けた政権運営に変えさせていく大きな世論形成を、国民とともに求めて活動することがより一層求められている。会員の皆様、共に頑張りましょう。
(保険医新聞「主張」 2025-5)