高額療養費制度の負担上限額引き上げ撤回を求める要望書

2025年2月14日

内閣総理大臣 石破  茂 様
厚生労働大臣 福岡 資麿 様
財務大臣 加藤 勝信 様

岐阜県保険医協会
会長 永田 正和

高額療養費制度の負担上限額引き上げ撤回を求める要望書

政府は、医療費負担限度額(高額療養費制度)を今年8月から段階的に引き上げる「見直し」を、新年度予算案に盛り込みました。現在、患者団体からの要請を受けて、見直しを据え置く案が検討されていますが、岐阜県保険医協会は医療者の立場から、患者の治療・療養を支える高額療養費制度の改悪に抗議するとともに撤回を求めます。

高額療養費制度は、がんや難病などの重篤な疾患や長期に治療が必要な患者が、高額な医療費負担によって治療の継続が脅かされないように、支払う医療費を一定額以下にする制度として、公的医療保険制度の中に位置付けられています。いのちに関わる疾患で治療を受け、かつ高額な医療費を支払う患者にとっては、お金の心配なく安心して医療を受けるために必要不可欠な制度です。今回の負担上限額引き上げによって、すでに高額療養費制度の負担上限額まで支払っている患者が治療の継続を断念しなければならなくなることが危惧されます。患者のいのちまでも脅かす高額療養費制度の改悪を容認することはできません。

高額療養費制度を利用したことがない国民であっても、思いがけず大病を患い高額な医療費を負担する必要が生じることはどの世代にも起こり得ます。特に働く世代や子育て世代などの現役世代やがんや難病に罹患した場合には、長期にわたる高額な治療費により生活が困窮する事態にもなりかねません。

今回の「見直し」の中には、70歳以上の高齢者(年収370万円未満の場合)の外来医療費負担を抑える「外来特例」の負担限度額を大幅に引き上げることが示されています。特に後期高齢者(年収200万円以上の場合)は、2022年10月から医療費の窓口負担が1割から2割へ引き上げられましたが、2割負担の導入による受診抑制が厚労省の調査でも明らかになっています。高額療養費の負担上限額の改悪により、ますます必要な受診が妨げられます。

政府は、すべての世代における被保険者の保険料負担の軽減を図る観点から、負担上限額の引き上げを正当化しています。しかし、厚労省の試算では被保険者一人当たりの保険料軽減はわずか年額1,100円~5,000円程度(月額92円~417円程度)と限定的です。また、2月7日の厚労大臣記者会見で福岡厚労大臣は、「保険料と公費の合計で約5,330億円の減少が見込まれ、実効給付率が変化した場合に経験的に得られている医療費の増減効果は、機械的に計算すると、約2,270億円」と答弁しました。内訳として患者の受診抑制で2,270億円の給付費削減、患者の負担増で3,060億円の給付費削減を見込んでいることになります。これだけ重大な影響を及ぼす見直しを、制度を利用している「患者団体へのヒアリング」もなく、新年度予算案として閣議決定した政策決定プロセスに怒りすら覚えます。政府は2027年度までに防衛費の大幅増を目論んでいますが、今回の高額療養費制度の見直しは、防衛費増税のために国民のいのちと健康を犠牲にするものだと言わざるを得ません。

お金の心配なく必要な医療を全ての国民が受けられるよう、小手先の手直しではなく高額療養費制度の自己負担上限額の引き上げの撤回を求めます。