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保険医新聞9月号主張

参議院選挙をふりかえる
 第26回参議院選挙が終わりました。コロナ禍も3年目を迎え、我々が強く訴えてきた医療体制や社会保障充実、困窮を極める生活者の救済、ウクライナ問題にみる戦争と平和の問題、女性や子供の人権、気候変動で頻発する日本列島の災害とその対策の問題など、ここ数十年積み上がってきたあらゆる課題が選挙の争点であったはずですが、結果としては現状維持の自民党を中心とした政治体制が是認されるという形となりました。残念な結果と言わざるを得ません。

 今回、投票日直前に安倍元総理が暴漢に襲われ命を落とすという事件がありました。振り返れば「政治家への暴力」は昨今非常に増えており、特に野党政治家や女性政治家への暴力脅迫事件が後を絶たない状況でした。閉塞感漂う市民の社会への不満、政治への不満、と見る向きもありますが、しかしこうした「民主主義を脅かす暴力」は断じて許されません。当協会としても強く非難する立場にあります。一方でしかし、選挙後少しずつ明らかになってきているように、「なぜここまで市民の願いが顧みられない政治なのか」を示唆する事件でもあったように思われます。事件の全容解明が待たれます。

 当協会は本年で創立44年となります。「患者さんの権利を守る」、「人の命を金銭の多寡で左右させない」、「医療体制を持続可能なものに」、そのために「開業医の生活を守る」、こうした当協会の主張は、この国で懸命に生きる市民としての当たり前の主張にすぎません。憲法25条に描かれた理想社会の姿。我々が掲げる「日本国憲法」は、権力の暴走を防ぎ、権力の無為無策を防ぎ、真に国民のための政治を行わせるための物です。このコロナ禍において、益々その輝きを放つものです。ここ数年の当協会・保団連が注力してきた「医療費窓口負担2割化阻止」の運動もそれを具現化する運動の一環です。救われるべき方々をきちんと守る。先生方の御協力御尽力には、改めてこの場をお借りして感謝を申し上げる次第ですが、その論拠となる憲法は今、参院選での改憲勢力の躍進を受け、危機にあります。

 我々がこの選挙の結果を受けて考えるべきことは何か。それは「今まで以上に」この医療運動を前に進めていくことだと思います。会としての結びつきを強くし、より多くの患者さんに、先生方に、会の輪を広げていくことだと思います。会員の皆様の一層のお力添えを、今後とも賜りたく存じます。

(2022-09)