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保険医新聞12月号主張
今年を振り返って ―コロナ禍において―
診療報酬の引き上げが一番必要
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行し始めてから約1年半以上が経過した。感染が拡大するなかで緊急事態宣言が断続的に発令されたものの、医療現場で先生方の努力も大きな力となり、現在は外出行動の抑制も段階的に縮小しており回復傾向にある。日本のワクチン接種完了者比率は11月には人口比8割に近づいてきている。しかし、2021年末にかけて経済活動の再開が進むにつれて感染者数の増加の可能性も十分予想される。
コロナ第1波から第5波においては、感染拡大に対する安倍政権、菅政権の対応は、後手後手の対応で医療逼迫を招いた。医療現場では命の選択を迫られ、入院できずに自宅で亡くなる患者も続出した。ワクチン接種も世界各国と比べ一時期大幅に遅れた。その上で、政府は検査やワクチン接種などの感染拡大防止や、暮らしと生業への補償などを最優先にすべきであることを学んだはずである。
しかし、通常国会で成立した75歳以上医療費窓口負担2割化は、コロナ拡大の真最中に受診抑制を招く患者負担増を強行するなど言語道断である。コロナ封じ込め策としては、医療機関への実質的な減収補填、医療従事者への慰労金再支給、感染防止等支援事業の継続と拡大、感染症対策の取り組みを評価する基本診療料等の引き上げなどの措置が必要である。
また、公的・公立病院の統廃合などを進める地域医療構想は、今後の感染再拡大や新たな感染症の出現を想定すると安易な縮小再編は行うべきではないと考えられる。
この他、歯科医療費総枠拡大やマイナンバーカードの保険証利用阻止なども重要である。医療機関の感染症対策として臨時的に加算されていた初・再診料等への上乗せの再開、コロナ収束後も感染症対応を見越した医療の給付水準を確保するものとして、次回改定で恒常的な点数の設定が必要である。
また、当協会での今年の大きな課題であった岐阜で開催された第36回保団連医療研究フォーラム「生き生きと健康に働くためには-コロナ禍を乗り越えて」は、オンラインのみの開催ではあったが無事終了できた。多くの会員の先生方のご協力に感謝申し上げる。全国共同調査の結果、今後の働き方に対する要望としては、診療報酬の引き上げが一番多く、次に診療報酬の算定要件の簡素化、スタッフ雇用の不安解消、届出業務の簡素化を望む意見が多かった。医師・歯科医師が「生き生きと健康に働く」には、高齢化対策、労働時間の改善、経営状態の改善、健康診断に行ける環境の整備、後継者問題に関してのシステムの構築、診療報酬の引き上げ、レセプトの簡素化などが必要と考えられる。
以上より、今後の協会としての活動として、会員と患者・国民の要求に基づく運動、省庁への要請、議員要請、自治体への改善要求、医師・歯科医師・患者の現場での実態と要求が的確に報道されるようにマスコミへの対策強化が必要である。また、組織拡大、世代継承、女性会員や役員の拡大も重要と思われる。今後も協会活動への参加・協力のほどよろしくお願いしたい。
(2021-12)