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保険医新聞12月号主張

コロナ診療の経験を踏まえ、
初診におけるオンライン診療の恒久化は慎重に
 2019年12月に中国武漢からはじまった新型コロナウイルス感染症(COVID―19)は、我が国においては1月に感染が確認され、2月にクルーズ船での感染が広まり第1波がはじまった。4月には緊急事態宣言が行われ、受診控えが起こり医療機関の経営が悪化した。世間ではマスクや消毒液などの買占めが起こり、医療機関でも徐々にマスク、消毒用アルコール不足が問題となったため、当協会で急遽「マスク・消毒用アルコールの安定供給」に関するアンケートを行い国と県に安定供給の要請をした。この行動は、マスコミでも大きく取り上げられ改善の方向に大きく動きだした。その後も、新型コロナの医療機関への影響に関してのアンケート、コロナ検査のアンケートなどを行い、その都度行政と懇談し要請を行った。会員の皆様の関心も高く、非常に多くの貴重な意見をいただき大変感謝しております。

 ところで、4月より、新型コロナウイルス感染症流行のもとに初診における電話および情報通信機器による診療が臨時的に認められた。患者や医師・歯科医師・看護師などの医療者を院内感染のリスクから守るためや、患者の医療機関へのアクセスが制限される場合には有用である。また、医療現場として、ICT、デジタル化などの技術革新をもって医療の安全性・有効性・生産性を向上させるのは必要であるが、現時点で安全性が担保されているとは言いがたい。菅政権はデジタル庁なるものを創設して、このコロナ禍の混乱に乗じてオンライン診療の普及を無理やり推し進め、なおかつ初診にも適応しようとしている。今回問題なのは、①時限的措置といいながら恒久化しようとしている②症状や病態や基礎疾患などがまったくわからない初診に適応しようとしていることである。会員の先生からも「基礎疾患の悪化や病気の発見の遅れがあった、料金の徴取ができなく困っている」などの意見をいただいた。診療は対面診療でないと病状は把握できないという大原則、医師の裁量権を無視した利便性のみを求めた対応である。初診でのオンライン診療は、医療者としてはいくらニーズがあるにせよ、大変危険性をはらんだ行為である。

 また、「オンライン資格確認」も強引に進めようとしている。マイナンバーカードの推進の一手段であろうが、高齢者が多い医療機関では紛失、個人情報の漏洩など様々な障害が生じてくると思われる。我々は、マイナンバーカードによるオンライン資格確認には慎重な立場をとるべきと訴えていく。Onlineを直訳すると「綱渡り」。文字どおり綱渡りで落ちてしまわないよう注意が必要である。当協会および保団連では、ひきつづき会員アンケートおよび行政への要請を続けてまいりますので、ご協力お願いします。

(2020-12)