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保険医新聞11月号主張

本当はこわい検体検査室
 ある内科医院で血液検査予定の脂質異常症の患者が、「薬局で済ませている」と検査を断った。内容を確かめるべく医師が近くの調剤薬局に問い合わせたところ、検体検査室が稼働して約3カ月経過しており、その患者も利用していたことが判明した。

 利用者実績には、全15例のなかで4例は通院中または通院歴があり、そのうちの2例は糖尿病治療が中断されていた。ほかに「以前に異常値を指摘された」4例を加えると、半数以上は何らかの医療介入が必要な症例であった。1項目1000円の検査を場合によっては2項目以上、わざわざ実費で受けるのは、「それなりの心配」があるからであろう。

 医療機関で検査を受けた場合は、診断の結果として、不本意ながらも、治療方針に従う必要が生じてしまう。しかし、診断や治療の開始に猶予を残しておきたい人にとって、この簡易検査は非常に魅力的なものであるかもしれない。

 利用者自らが採取した検体を、その場で検査、測定して、直ちに検査結果を受け取る事ができる施設「検体検査室」は、平成26年4月より調剤薬局の中に設置されるようになった。本来の目的は、国民の健康意識の醸成や、健康診断や医療機関受診への動機付けを高めるもので、自己健康管理の一助となるようなサービスと位置付けられている。そして、利用者に健康診断等の受診勧奨を行うことで、医療機関への受診を促進し、疾病の予防や早期発見に寄与することが期待できるとされている。

 しかし、受診を回避して検体検査室を利用するような場合に、受診勧告を素直に受け入れるのは難しそうである。そもそも、検査結果の判断に関与できない測定室の従事者(薬剤師等)が、何を根拠に、どの対象に受診勧告をしていくのかも明示されていない。また、利用者に対しても、「誤った自己判断で適切な治療の機会を逸する事がないように」と注意喚起しながら、医療機関への相談は「本人の判断」に任せることになっている。

 この制度の行き着く先は、健康推進のような生易しいところとは遠く離れていくかもしれない。「日本再興戦略」から、医療周辺産業の成長を目的に、一定の戦略分野が見込めるものとして創作されたものの一つが、この検体検査室である。大きな構想のわりには地味な稼働しかできていない印象があるが、これからは医師の仕事を医療周辺産業に担わせる途轍(とてつ)もない機能を有するようになる可能性を秘めている。生活習慣病関連の薬剤のOTC化が推進され、6年間の教育を受けた薬剤師が医師の替わりを務めることになれば、検体検査室はどこの薬局でも必須のものとなる。そして、受診抑制と地域医療の衰退が現実味を帯びてくるようになるまでに、それほどの歳月は要しないだろう。

(2016-11)