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保団連東海ブロック税務調査アンケート概要②
 医業収入・経費の留意点と指摘事項
 保団連東海ブロック協議会(岐阜・愛知・三重・静岡各保険医協会)は、2017年11月~12月に「税務調査アンケート」を実施した。今回は全会員対象に改正国税通則法(2013年1月施行)で法制化された税務調査手続きについての周知と理解が進んでいるか把握するとともに、2016~2017年に税務調査を受けた会員を対象に適正な税務調査が行われているかどうかアンケートを行い、4協会で910人(2016~2017年に税務調査を受けた会員は68人)から回答が得られた。
 この度、アンケート結果がまとまったので前号から2回に分けて概要を紹介してきた。また、この結果に基づき9月27日に名古屋国税局との懇談を予定している。

調査の2割でカルテ開示の求め


 調査官は、自費診療の現金収入などカルテと照合するため開示を求める場合がある。しかし、窓口日計表など他の帳簿書類で確認できるので、わざわざカルテを見せる必要はない。医師・歯科医師には刑法等で重い守秘義務を課しており、アンケートでは6割が「カルテ開示の求めを断ることができる」ことを知っていた。しかし、実際の調査現場では、調査官は2割でカルテの開示を求め、そのうち3分の2が開示を許している。
 カルテは医療機関と患者の信頼関係の基盤だ。国会質疑でもカルテを見せることができるのは「個々の法律にその根拠が明らかである場合」と厚労省は見解を示しており、裁判所の提出命令や令状がない限り、本人以外のカルテ開示には応じてはならない。カルテのコピーや持ち帰りなどは論外であり、必ず拒否すべきである。

違法な現況調査・反面調査も散見


 調査官は、調査日の数日前から当日の現金出納帳などの帳簿を見たがる。これを「現況調査」といい、現況(進行年度)に誤りがあれば、自由診療収入の漏れや過去の申告も問題があると疑いをかける。そもそも税務調査は納税者が確定申告した内容について調査するものであり、現況調査自体が違法だ。国税庁のマニュアルでは、現況調査は「現金取引を主体とした事業の実態を把握する場合」に「記帳の真実性や事業の実態を検討する」とある。医療機関は、基本的に現金取引を主体とする事業ではなく、応じる必要はない。アンケートでは、9割が断れることを知らず、税務調査を受けた会員のうち14.7%が現況調査を経験した。
 技工所などの取引先や、金融機関、デパート等への調査を「反面調査」という。反面調査をしなければ、「納税者の申告内容に関する正確な事実の把握が困難と認められる」場合に行われる。納税者が税務調査に協力している場合は、その必要はない。アンケートでは19.1%で行われ、そのうち二件で税務調査開始前の違法な反面調査があった。納税者の「理解と協力のもと、その承諾を得て行われる」べきであり、反面調査は医療機関の信用失墜につながるので、厳重に抗議してやめさせることが必要だ。

おたずね文書にご注意を


 税務調査手続きの法制化により調査件数が減少したことから、納税者との接触の機会を増やすため、行政指導に名を借りた事実上の税務調査(いわゆる「おたずね文書」の送付)が実施されています。これについては日弁連も「税務調査における適正手続保障に関する要請書」(2017年2月15日)で、国税通則法の「適正手続きを潜脱する手法」と批判している。アンケートでは2.7%の会員におたずね文書による問い合わせがあった。明らかな申告誤りの指摘の場合もあり、税理士とよく相談して慎重に対応することが重要だ。

医業収入調査の留意点

 最重要課題は自由診療収入の適否。自由診療が多い診療科目については現況調査が行われる場合がある。最も有効な調査手法として重視し様々な方便を使って調査を強要する。したがって、事前に十分な整理整頓に心がける必要がある。

【調査での指摘事項】
▼ 予防接種について、ワクチンの購入数、窓口収入と市町村からの振込金額の照合
▼ 自由診療の領収書と日計表の照合、歯科技工伝票との照合
▼ 歯科用貴金属片の売却収入の申告漏れ
▼ 生命保険の満期返戻金の申告漏れ など
 
必要経費の留意点

 一般論や曖昧な基準で是正を求められるケースも少なくない。自主申告制度の下では、経営者が事業の遂行上「必要」と判断して支出したものは法律の規定に適合する限り「必要経費」になる。従って、納税者側にも「必要性」の理論付けと、客観的な証拠等の保存の励行が大切だ。

【調査での指摘事項】
▼ 仕入等原価について、減価償却資産や自家消費分が混入していないか、MS法人による課税回避行為がないか
▼ 専従者給与が職務内容や勤務実態から過大給与にあたらないか
▼ 従業員の給与計算で勤務状況が分かるようにタイムカードを使用するように指摘
▼ ゴルフの接待交際費の回数が多いと否認。相手との関係性について確認された
▼ 明細の不明な領収証について、各店に詳細を取り寄せて経費計上の必要性の有無を調べた
▼ 車など減価償却資産や水道光熱費等の、自宅と診療所の使用割合についての指摘 など

(岐阜県保険医新聞2018年8月10日号)



※保団連東海ブロック税務調査アンケート概要①はこちら